お金に関する事

会社を売却する際によく聞く「のれん代(営業権)を30分で理解する

「のれん」とは

飲食店などの入り口に屋号を染め抜いた布が掛かっていることがありますが、あの布のことをのれん(暖簾)と呼び、お店の信用を表していたことから、会社のブランドや技術力などの信頼を高める目に見えない資産のこと(これを無形固定資産、Intangible Assetと言います)をのれんと呼んでいます。

のれんは、前述したように、会計的には貸借対照表の資産の部の「無形固定資産」という勘定科目に計上されます。
また、日本の会計基準においては、のれんは償却対象資産でもありますので、最大20年間均等に償却していくことが可能です。

純資産が80憶円の会社を100憶円で買収した時には、純資産よりも20億円高く買収していることになるので正ののれんが20億円発生していることになります。
この20億円を20年かけて均等償却すると、毎年1億円ずつが20年にわたって償却されることになります。

一方で、純資産100憶円の会社を50億円で買収した場合には▲50憶円ののれんが生じていることになります。このようにマイナスののれんのことを負ののれんと言います。

日本の会計基準ではのれんは償却資産となりますが、国際会計基準(IFRS)においてのれんは償却されることはありません。

しかし、のれんの価値が著しく下落した場合には減損対象となり、減損処理が必要になります。

「のれん」の算出方法

のれんとは企業の超過収益力を表しているものであり、以前は「営業権」と呼ばれていました。
のれんはどのような方法で求められるのでしょうか。

主な「のれん」の算出方法には、(1)コスト・アプローチ、(2)インカム・アプローチ、(3)マーケット・アプローチ、の3つの方法が挙げられます。

(1)コスト・アプローチ

会社を売却する時の価額を算定する方法としては、会社の純資産額に「のれん」を加えて売却価額とするケースがあります。

「のれん」は、当該企業の営業利益、或いは経常利益の3年~5年分、として見積もるケースが多いようです。この方法は、これまでの実績を基礎として計算されるので客観性が高い、と考えられています。

(2)インカム・アプローチ

インカム・アプローチとは、対象企業が将来的に獲得するであろうキャッシュフローを現在価値に引き直して算定するDCF(Discounted Cash Flow)法に代表される方法です。
この方法では、将来キャッシュフローの予測や割引率の設定などによって結果が大きく変わってしまう可能性がある点に留意が必要です。

(3)マーケット・アプローチ

類似している同業他社企業や取引事例の相場などを参考にして売却価額を決める方法です。ただし、類似した無形固定資産の評価事例は極めて少ないと考えられます。

「のれん」をつけた上場企業によるM&A事例

少し前の事例になりますが、日本の大手家電メーカーである東芝が2006年に英国の核燃料会社から米国の原発子会社であるウエスティング・ハウス(WH)を約54億ドルで買収しました。

当時のWHの純資産額は約18億ドルと言われていたので、実に36億ドルもののれんを得ていたことになります。

しかし、その後WHは思ったような業績を上げることができなかったために、東芝は巨額の減損処理を余儀なくされることになり、2011年の東日本大震災による原発事故の影響、そして粉飾決算事件、などにより東芝そのものの経営に対しても赤信号が灯った事件を覚えている人は多いのではないでしょうか。

このように買収時に正ののれんを計上できていたとしても、その後のビジネス運営をしっかりと行っていないと予想外の損失を蒙ってしまう可能性があることには十分注意が必要です。

近年、減損リスクによって上場企業はのれんをつけづらくなっている

前述したように、日本基準ではのれんを均等償却することが可能になっていますが、もう1点、日本の場合はのれんの対象となる無形固定資産の基準が厳しく、のれんを計上することが国際会計基準に比べると難しいと言うことも可能です。
一方で、国際会計基準の場合は、のれん計上の間口は広くなってはいるものの、事業がうまくいかなくなった場合には減損処理を厳しく迫られる、という特徴があります。

現在では国際会計基準を導入している企業も大幅に増えており、そういった意味においては、のれんの減損リスクに晒されている企業も増えていると考えられます。

つまり、日本基準であれば費用計上(=支払う税金が減る)の観点からのれんの計上には喜ぶべき点があったのですが、国際会計基準に対応して一気に巨額の減損処理を行うのであれば無理してのれんを計上しなくてもよい、というように考えが変化してきたのかもしれません。

中小企業における「のれん」の算出方法(≒株価評価方法)

中小企業におけるM&Aにおいては、コストアプローチ(前述)による方法が一般的になっています。
上場していない株式(非上場株式)の評価方法と言い換えても良いでしょうが、この方法には(1)簿価純資産法と(2)時価純資産法、の2つがあります。

(1)簿価純資産法

簿価純資産法とは、貸借対照表上の資産・負債に粉飾や誤り(減価償却の不足分など)などの修正を加えて、資産から負債を差し引いた純資産額を用いて株式を評価する方法です。

中小企業では、頻繁に新株発行や株式売買を行うようなことは考えられず、当事者にとっては、マーケット・アプローチやインカム・アプローチなどの評価方法は理解・納得が困難であり、客観的な貸借対照表の純資産額をベースとしているコスト・アプローチの方が選ばれやすいからだと考えられます。

(2)時価純資産法

時価純資産法とは、バランスシート上の資産・負債の各項目に関してそれぞれを時価評価して、時価純資産を算定して株式評価する方法のことです。例えば、売掛金の滞留債権の評価減を実施したり、退職給付債務など簿外処理されている可能性がある負債をオン・バランスしたり、などの方法により時価純資産を計算するのです。時価純資産法では、各勘定科目別に時価評価を実施して、それらを積み上げることにより時価純資産を求めることになります。

中小企業にとっては、どの方法でのれんを算定するのが一番良いのか、という点については、その会社が置かれている状況やのれんを利用する目的などによって異なる可能性があるので、これが最適です、ということは難しいのですが、少なくとも、前述したように恣意性が入り込む可能性が少なくて、客観的な評価結果になると当事者を納得させるような方法が望ましいと考えられます。

高く会社売りたい方は戦略的な準備が必要だからこそ「M&Aナビ」に相談を

会社を売却しようとすると、儲かっている会社であれば、その売却価額には「のれん」が加算されることが一般的です。しかし、その一方でこの「のれん」について詳しく理解している人はそんなに多くないかもしれません。

会社を売却する際には、その会社にはどのようなのれんが存在していて、どのくらいの「のれん代」があるのか、を事前に確認しておくことは極めて重要です。

また、その「のれん」は会計的にどういった処理が必要になって、将来的にはどうなっていく可能性があるのか、まで検討範囲に含まれていれば安心できるでしょう。

のれんを加算して会社を正当な価額で売却するためにも、「のれん」についても詳しく説明していて、丁寧なサポートが期待できる「M&Aナビ」に登録することが会社売却の第一歩となります。デキる社長は、上手に「M&Aナビ」を活用しています。