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発達心理学とは?エリクソンとピアジェを知り発達について理解する

人間は生涯成長し続ける生き物。その過程で起こる発達について学ぶ「発達心理学」というものがあります。

心理学と聞くと難しそうなイメージがありますが、これを知ると子育てや夫婦関係に役立つことも。職場の上司が「今どの発達段階にいるか」知ることで、コミュニケーションの問題などを解決する手助けになるかもしれません。

この記事では、2人の心理学者が提唱した発達に関する理論についてもわかりやすく説明しています。ぜひ、参考にしてみてくださいね。

発達心理学は人間の変化を知る学問

発達心理学(はったつしんりがく、英: developmental psychology)は、人の加齢に伴う発達的変化を研究する心理学の一分野。

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発達心理学と聞くと、赤ちゃんや子どもの発達について学ぶものと思う人が多いでしょう。しかし、発達というものは成人になっても高齢者になってもするもので、人間の生涯に関わっているのです。

人は、生まれてから死ぬまで、成長もしますが、退化もします。また、発達するに伴い物事への感じ方などが変わってくることも。

これらを学ぶのも発達心理学のひとつと言えます。

詳しく学べば人を支援することも可能

人間は、発達するに伴い考え方や行動が変化していきます。行動を理解する心理学の一つである発達心理学。これを学ぶことにより、人間そのものを理解することが可能になるでしょう。

発達障害という言葉を聞いたことがありませんか?そのような問題を抱えた人に対し、発達過程における様々な要因を考え、理解するのにも役立ちます。

臨床心理士などの資格を持つ人たちは、 発達心理学についてよく理解している人です。資格取得までいかなくても、通信教育などで学ぶことも可能な世の中になっています。

興味がある人は、学んでみても良いですね。

子育てや教育にも役立つ

先ほど、子どもの発達を学ぶことだけが発達心理学ではないと言いましたが、子どもを理解するために発達心理学は重要です。

子育てをしていると、子どものことが理解できなくなることもあるでしょう。そんな時、その子の月齢や年齢に対しての発達を理解していると、その子自身を理解してあげることにも繋がります。

子どもは短期間に著しく発達するので、ついこの間分かり合えたと思ったのに、もう理解できない…なんてことも。

例えば、イヤイヤ期と言われる2歳児ですが、これは、発達していくために大切なプロセスだと考えられています。親にとって大変な時期ではありますが、「うちの子だけじゃない。みんな一緒。いつかはなくなる。」と思えれば少しは気持ちが楽になるものです。

今、 子ども達がどの発達段階にいるかということが分かるだけで、子育ては一段としやすくなるのでは?

子育てだけでなく、保育士や教員など教育に関わる仕事に就きたいと思っている人は、発達心理学を学ぶことになるでしょう。将来家族を持ち子どもができた時にも役立つものなので、しっかり身につけておきたいですね。 

エリクソンの「発達段階」

エリクソンという心理学者をご存知でしょうか。「心理社会的発達理論」と呼ばれる発達段階を提唱した人物です。発達心理学を語るにあたり避けては通れない人物とも言えるでしょう。

人生を8つの段階に分け、どんな心理を抱える時期なのか、どんな対人関係を築く時期なのか、を分類しています。

人間は、一生涯どの時期においても発達していて、どの段階においてもクリアすべき課題とそれを邪魔する障害となるものが存在しているのです。

乳児期

0歳から2歳が乳児期です。

この時期には親と過ごす時間がとても長いでしょう。

その中で赤ちゃんは様々な感情を持つようになります。嬉しい・楽しいなど、正の感情ばかりでなく、負の感情も…例えば、不快・不安・恐怖などです。

この負の感情を親がしっかりと取り除いてあげ、愛情をたっぷり与えてあげると、赤ちゃんには「基本的信頼」が構築されるようになります。

基本的信頼を獲得できた赤ちゃんは、 希望を持てるようになり、その後の人生で出会うさまざまなものを信じることが可能になるのです。

反対に基本的信頼を得られなかった場合、負の感情が消えなくなり、「不信感」を持ち続けることに。

乳児期に受けた影響は、これから長い人生においてのコミュニケーションの基盤となるため、この時期は赤ちゃんとしっかり向き合い、たっぷり愛情を注いであげるといいでしょう。

幼児前期

2歳から4歳は幼児前期といい、この時期になると、自分で食事ができるようになったり、洋服の脱ぎ着ができるようになったりします。

始めからうまくいくわけもなく、 最初は親や周囲の大人たちがサポートをしながら日常動作を覚えていくことでしょう。 

その中で、時には失敗したり、間違えることも。この時、「恥ずかしい」という感情を覚えます。

恥ずかしいと思いながらも、周囲の大人たちのサポートにより「自分でやってみる」という想いである「自律性」が芽生えるのもこの時期です。

「失敗しても大丈夫。」「間違えても見守っているよ。」と、子どもを受け入れる環境を作ることで自律性は育まれます。

ついつい手を出して手伝ってあげたくなりますが、それはグッと我慢。自分でやらせて自律性を育ててあげましょう。

また、失敗してしまった時は怒ったりせず、優しく見守ってあげること。「失敗したら怒られる」という事実は、子どもを萎縮させてしまいます。

幼児後期

4歳から5歳になると視野が広がり、色々なものに興味をもつようになります。

「イタズラ」を覚えるのもこの時期。親に注意される頻度も高くなるでしょう。
「やってはいけない」とわかっているのに、ついつい気持ちの赴くままやってしまう。これは「積極性」が関係しています。

いけないこと、危ないことであれば叱らなければいけないと大人は思うでしょう。しかし、怒りの感情露わに「怒る」のはやめましょう。子どもは、怒られると罪悪感や不安感が強くなります。

罪悪感は今後の人間関係やコミュニケーションにも悪影響を与えることも。

「怒る」と「叱る」は別物。と言いますよね。愛情がある叱責は、子どもにも伝わります。積極性を失わせず、罪悪感も抱かせないように叱るのは難しいかもしれませんが、大人が意識しているだけでも子どもへの伝わり方は変わってくるはず。 

お手伝いをしたがるのも積極性のひとつです。大人に余裕がない時はお手伝いをさせてあげられない時もありますよね。

しかし、いつも「お手伝いはしなくて大丈夫」と断っていると、子どもの積極性はどんどん失われていくことに。心に余裕のある時は、ぜひ小さなお手伝いをお願いしてみてください。

児童期

5歳から12歳は児童期と呼ばれる時期で、幼稚園や小学校などで集団生活を経験する段階です。

同じ年齢の他人と自分を比べるようになることで、「自分が劣っている」と感じる場面も…これが「劣等感」。

しかし、「あの子に負けないように自分も頑張ろう!」と努力する「勤勉性」も芽生えるのがこの時期の特徴です。

勤勉性によって何かをクリアし、成功体験ができることで、それは自信に繋がります。自信は、今後の発達にとてもいい影響を与えるため、たくさんの経験をさせてあげたい時期です。 

青年期

いわゆる思春期ともいわれるのが青年期。この時期は、将来や自分自身のことについて色々と考え、「一体自分は何なのか」と思い悩む時期です。

その答えが出て同一性を確立することで、 自分を受け入れることができるようになります。

同一性のことをアイデンティティとも呼びますが、これが確立されないと、後ろ向きの感情である同一性拡散に。同一性拡散とは、「いったい自分は何者なのか。どうしたらいいのか。」と迷走してしまうことです。

この時期ばかりは、自分自身に向き合うほかありません。大人ができることとしたら、頼られたときに受容してあげたり、ちょっとしたアドバイスをしてあげたりすることです。

あまり過干渉すぎるとかえって同一性拡散を促進させてしまう可能性もあるので要注意。

成人期

思春期を乗り越えると成人期に入ります。年齢で言うと20歳から39歳くらいまでがこの時期です。

自分を確立した後は、社会に出て、そこではたくさんの人と出会い、良いことも悪いこともあるでしょう。

その中で、仕事やプライベート、恋愛などで信頼できる人たちと深い仲になることがあります。これが「親密性」です。

しかし同時に出てくるのが「孤独」。自分は他人に受け入れてもらえるか、自分を否定されたらどうすればいいか、など悩んでしまい、人と親密になることを避け孤独になってしまいます。

青年期でアイデンティティ(同一性)が確立されていないことで、他人とのコミュニケーションがうまくとれないことが孤独の一因です。

「1人が好き」という人もいるでしょうが、ほんの数人でもいいので親密な関係である人物を作っておくと良いですね。

壮年期

40歳から64歳までが壮年期。この時期になると、今までの人生で得た知識や技術を次世代を支えていくことに関心を持つようになります。

反対に、次世代や将来のことは「どうでもいい」と、他人と関わりを持とうとしなくなる人も。

自己完結・自己満足に陥ってしまうと、コミュニケーションで苦労することもあるので、積極的に後輩達と関わるようにすると良いでしょう。

老年期

65歳以上を老年期といい、「どんな人生だったか」と振り返る時期です。

この問いに、どう答えるか、どう思えるかが重要。「良い人生だった!」と思える人は自己統合を得られます。

逆に、「良くない人生だった」と、自分の人生を受け入れることができない場合は、「今までの自分の人生は何だったのか」と絶望してしまうのです。

良くないことばかりに目を向けるのではなく、自己統合が絶望を上回れば、これまで行ってきた知恵を自分の下の世代に受け継ぐことができ、 より良い老後を過ごすことができるようになります。 

ピアジェの「発生的認識論」

発達心理学を学ぶにあたり避けては通れない人物、もう一人はピアジェです。彼は「発生的認識論」を唱えました。

これを知っていると、子どもがどのようにして成長していくのかを知ることができます。

理解できない子どもの行動に対しても、「今は周りの世界を認識して成長している途中なのだ。」「私たちには備わっている能力でも、まだこの子には備わっていないんだ。」などと納得し、肯定的にとらえることが出来るようになるでしょう。

感覚運動期

0歳から2歳までを感覚運動器といいます。なんでも口に入れてしまう赤ちゃん。これにはわけがあったのです。

言葉を話せない赤ちゃんは、なめる、触る、見る、叩く、投げるなどあらゆる感覚を使って物事を把握しようとします。

赤ちゃんが、食事をしているときに食べ物をこねくり回すことがあるでしょう。これも、手の感覚で、「これは一体何か。」と理解しようとしているからです。

循環反応

感覚運動期の間、循環反応という繰り返し同じ行動をする行為が生後数か月から始まります。

例えば、「哺乳瓶を落としたら不思議な音がしたので、何度も落としてみる。」といった行為。これも、「音」という感覚で「これは一体何か。」を理解しようとしているのです。

親からすると「何度も同じことをしないで!」と思ってしまいそうですが、これも赤ちゃんにとって必要な行動と思えば、少し気が楽になりそうですね。

対象の永続性

これは、「対象物を布や箱などで覆ってしまっても、物がなくなることはなく、そこに存在している。」と理解できること。生後6か月頃になると、これを獲得します。

生まれて間もない赤ちゃんは、おもちゃを布などで隠されてしまうとおもちゃがまるでなくなったように思ってしまいますが、視界から物が消えたとしても、おもちゃはなくなったわけではなく、そこにあると理解できる様に。

「いないいないばぁ」が理解できるのもこの原理。顔を手で覆っても、そこに人がいることがわかるので、ウキウキしながら再び現れるのを待てるのです。

前操作期

2歳から7歳を前操作期と呼びます。自分の知っていることは当然相手も知っているだろうと思い込んでしまう時期です。

自己中心性

自分の視点でしか物事を判断できず、相手の立場で想像することはできないということ。自分が楽しいから相手も楽しい。自分には見えないから、相手にも見えない。こういうことです。

目をつぶると、人も物も見えなくなりますよね?この現象は、自分以外の他の人にも当てはまると思い込んでしまい、「まわりの人も何も見えていない。」と思い込むのが自己中心性です。

中心化

中心化とは、最も目立つ事実にだけ目を向けてしまうこと。

例えば、同じ200mlのオレンジジュースを、2つのコップに入れたとします。口が広く背が低いコップと、口が狭く背の高いコップ。すると、背の高いコップの方が高い位置までオレンジジュースが入ります。なので、「そっちの方が多い!ずるい!」となってしまうのです。

この時期の子どもには3つの「思い込み」があります。

  • 実念論:自分の物の見方が絶対的だと思い込む
  • アニミズム:物や物体にも人間のような思考や感情があると思い込む
  • 人工論:太陽や月などの自然物も人間が作ったものと思い込む

ピアジェは前操作期をさらに細分化しています。

感覚操作期を終えた2歳以降、4歳くらいまでの子どもは、目の前にないものも思い出して絵に書くことが可能になります。これが象徴的思考期。

4歳を超えると、絵本ような空想ではなく理性を用いるようになります。例えば、「建物は地面から勝手に生えるわけではなく、人間が材料を組み合わせて建てている。」と考えられるようになります。この時期を直観的思考期で、対象は4歳から7歳です。

具体的操作期

7歳から11歳を具体的操作期といい、この時期には理論的思考を獲得し始めます。

前操作期では目先の情報だけにとびついてしまい理解できなかった、「保存の概念」も理解できるように。コップが違って水面の高さが違っても、同じ量ということがわかるようになるのです。

そして、「数の保存」という概念を獲得するのもこの時期。

例えば、横一列に10円玉を10個並べても、10円玉を縦に10個並べても、10円玉の数は10個であると答えることができるようになるということです。たとえ見た目が変わっても、数は変わらないということが理解できるようになります。

形式的操作期

11歳以降は形式的操作期といい、抽象的なものや仮定についても理解できるようになります。

具体的操作期の子どもも理論的に考えることができるようにはなっていますが、抽象的なものには答えられません。

子どもが具体的操作期なのか?もう形式的操作期なのか?それを確かめるための良い例があります。

「けんた君はまいちゃんより大きいカバンを持っている。ようちゃんはまいちゃんよりも大きなカバンを持っている。一番大きなカバンを持っいてるのは誰?」

形式的操作期にいる子どもは、頭の中で答えを導き出します。一方絵を書かないと答えられない場合は、まだ具体的操作期にいると言えます。 

まとめ

「発達」や「心理学」と聞くと、なんだか難しそうで嫌煙してしまいそうですが、発達を理解するということは、今までの自分の人生を振り返ることにも繋がります。

そして、今後の人生をどう生きるか見直す良いキッカケにも。心理学の理論の中には難しい言葉がたくさんありますが、それは覚えなくても大丈夫です。

自分に必要そうなものやピンときたものだけピックアップし、頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

また、発達の進み具合は人それぞれです。「もう生後6か月なのに…。」「12歳にもなってこの質問に答えられない…。」と嘆くのではなく、しっかり本人と向き合ってあげるようにしましょう。